絵に描かれた猫がネズミを捕る?江戸時代に描かれた猫のお札

 

 

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ネズミ捕りの名手・猫にしかできないこと

 

猫は縄文時代にはすでに、ネズミから穀物を守るためにいたとされています。

縄文時代には家畜としての縄文犬がいたことが有名ですが、

紀元前1世紀の頃の長崎県壱岐市勝本町のカラカミ遺跡からは、

猫の大腿骨など十数点の化石が出土していることから、

もっと古くから日本にいたのでは、と考えられています。

猫には、長く「ネズミからの被害を防ぐ」と言う役割がありました。

猫はお腹いっぱいになれて満足。

ひとはネズミがいなくなって満足。

お互いにとって利益のある関係でした。

 

 

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「ネズミ算」に負けた猫の繁殖力

 

平安の頃は貴族の愛玩動物としてクラスアップした猫。

鈴木春信作 太田記念美術館蔵

 

一旦ネズミ捕りとしての任務は解任されましたが

江戸の世になるとまた、ネズミからの被害を防ぐために重要な任務が任されます。

江戸時代、猫はとても貴重なものでした。

ネズミを捕ってくれる猫。

江戸の頃になると、人々の暮らしは豊かになり、

食生活にも余裕が出てきました。

食べるものが豊かにある。

それに伴って、ネズミが爆発的に増え、ネズミの害に悩まされる人も増えることに。

ネズミの害に悩む人たちは猫を飼っている人に、

猫を借りてきてネズミ捕りをさせようとします。

これが「借りてきた猫」の由来でした。

 

ネズミ算とも比喩される、非常に高い繁殖能力を持つネズミが

短期間に爆発的に増えることを指す言葉があります。

和算の計算問題の一つで、

正月に雌雄2匹のネズミが12匹の子を産み、

2月にはその親子のネズミ七つがいがそれぞれ12匹の子を産み、

毎月このようにネズミが増えていくと12月には何匹になるかという問題で、

なんと276億8257万4402匹になるのです。

実際はすべての個体が一年生き延びるわけではないので

あくまで計算上ですが。

恐ろしい増え方をすることに例えられるほど、ネズミは多産ですが、

実は猫も多産。

猫は通常年に二回、栄養状態がよいと、3~4回出産すると言われています。

一回に生まれる子猫の数は2~6匹。

生後8か月ほどで出産可能になります。

ネズミほどではありませんが、あっという間に増えてしまいます。

これが現代では「多頭飼育崩壊」の原因となっていますが、

野良猫の場合、生存率は20パーセントほど。

5匹の猫がいたとして、1年後に生き残れるのは一匹程度と言われています。

バンバン増えて行って、猫が過剰になるかと思われますが、

これが猫が意外と増えない理由です。

ネズミの繁殖に猫の繁殖が追い付かない。

慢性的な猫不足。

さてどうするか。

猫を飼っている人に頼んで、

猫を借りてきたはいいが、思うように働いてくれない。

そこで人々は、猫の絵をお札として飾り、

ネズミの害を防ごうと考えました。

歌川国芳作 浮世絵「鼠よけの猫」東京国立博物館蔵

 

こちらのネズミ除けの絵は「売薬版画」と呼ばれるもので

富山郷土博物館蔵

 

「此図は猫の絵に妙を得し一勇斎の写真の図にして

これを家内に張おく時には鼠もこれをみれば

おのずとおそれをなし次第にすくなくなりて出る事なし

たとへ出るともいたずらをけっしてせず誠に妙なる図なり」

と書かれています。

 

 

ネズミよけと豊作祈願 養蚕の守り神「新田猫」

 

ネズミの被害に頭を悩ませているのは、一般家庭だけでなく

江戸時代の養蚕農家では、ネズミから蚕を守るため猫を飼うことが推奨されました。

しかし、当時の猫は高価で飼える農家は少数派。

そこで猫の代わりに「猫絵」を描いて蚕室に貼り、

蚕や繭を食い荒らすネズミをよけるまじないとする風習がありました。

猫絵の中でもネズミ除け効果が高いとされたのが、

新田郡下田嶋村(現在の群馬県太田市下田島町)に屋敷を構えていた

新田岩松氏の当主が4代にわたり描いた「新田猫(新田猫絵)」です。

群馬県立歴史博物館蔵

 

新田の殿様が描いた猫絵なので「新田猫絵」、

鼠除けなので「八方睨み猫」。

呼ばれ方は様々ですが、にらみを利かした猫の絵図である共通点があります。

群馬県立歴史博物館蔵

 

新田岩松氏は南北朝時代に争った足利氏と新田氏両系統の血を引く家柄で、

当時ネズミの害は「新田義貞一族の怨霊によるもの」という俗信があり、

これに対抗できるものとして新田の殿様が描く猫絵の効力に期待が寄せられました。

群馬県立歴史博物館蔵

 

養蚕農家の求めに応じて描いた猫絵ではありましたが、

量産することで石高わずか120石の極小旗本である新田岩松氏の

家計も助けることになったといわれます。

猫絵のタッチは4代の当主、温純(あつずみ)、

徳純(よしずみ)、道純(みちずみ)、俊純(としずみ)によって異なっており、

かわいらしい猫から睨みを利かせているような猫まで、

それぞれ個性が光ります。

「新田猫絵」左:岩松徳純筆、右:岩松道純筆 東京農業大学蔵

 

さて、この猫絵、どの程度の効果があったのでしょうね。

 

 

今日のヒメちー

 

猫のいない家は大変ですね。

ヒメは優秀なハンターですので、

ネズミくらいお茶の子さいさいです。

その華麗な技術をお見せしましょう。

ひもで遊んでいたところですが、ちょうど飽きてきましたので

下にあるおもちゃを取りたいと思います。

ヒメちー、さっきまで遊んでいたひもがまるで「命綱」みたい。

レスキュー隊も顔負けね。

あ、ぶれちゃった。いいとこなのにー。

ええい、このヒモ、邪魔なんですよ、ヽ(`Д´#)ノ ムキー!!

これは…。

なかなかに困難なミッションです。

もうちょっとですが届きません。

これはねぇやんによる陰謀です。

ヒメの雄姿をお届けしようと思ったのに…。

無念…。

自分の失敗を人に転嫁するあたり、猫っぽいわね。

「借りてきた猫」は結局ネズミ退治はできなかったことでしょうけれど、

現代の猫って、ネズミに対峙したらどうなっちゃうのかしら…。

 



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