猫も修行をする?阿蘇地方に残る伝説。
熊本県の阿蘇地方では、家で飼われている飼い猫は
大きくなると、山に修行の旅に出ると言われています。
行き先はいくつかありますが、代表的なのが熊本県の阿蘇山。
阿蘇の「根子岳」は昔から猫たちの修行の場であり、
肥後国はもちろん、九州、さらには日本全国から猫が集まって来るのです。
そんな伝説の残る「根子岳」(ねこだけ)は、「猫岳」と書かれることもあります。
この山には猫の王様が住んでいて、
飼い猫たちは王様に稽古をつけてもらいに行くとされています。
そして見事に免許皆伝となると、郷里に戻ってその地域の猫のボスとなるのです。
そんな根子岳の猫の王国伝説。
ヒメちーもいつか修行に出るのかしら…。
飼い猫たちの聖なる修行の場「根子岳」伝説
阿蘇山は肥後国、現在の熊本県にある活火山です。
実は「阿蘇山」という山がある訳ではなく、
中央部にある5つの山、
高岳、中岳、烏帽子岳、杵島岳、そして根子岳。
阿蘇山は5つの山と、それを取り囲む外輪山から成り立っています。
猫の王国があって、猫の王様が住んでいると言われるのは「根子岳」です。
「猫岳」と書かれることもあり、昔から猫たちが修行をする場とされてきました。
根子岳には神様が怒ったために山容がギザギザになったという伝説があります。
そのギザギザになった姿が猫の形に似ていたから
根子岳と名付けられたそうです。
…猫に…見えるかな?
大晦日や節分の夜には根子岳で会議をした
昔から根子岳には猫の王国があって、
虎のように大きな山猫の王様が住んでいました。
そして毎年大晦日や節分の夜には、猫たちが召集されて会議を開いていました。
その会議がどんな会議だったのかまではわかっていません。
会議ではなく、ただ王様に挨拶をしに行っただけとも言われます。
猫たちは肥後国からだけでなく、九州、
さらには日本全国からやって来ていました。
だからその頃になると、阿蘇山のいたるところで猫の鳴き声が聞こえたそうです。
また2~300匹もの猫が行列になって歩いているところを見かけることもあったとされます。
なお地域によっては根子岳の猫の王様は虎のような猫ではなく、
大きな黒猫だったとも言われています。
根子岳で修行に励む「猫岳参り」
根子岳は猫たちの修行の場としてもよく知られています。
「猫岳参り」と言って、根子岳へ修行をしに行く猫たちもいました。
修行の期間は数日から半年ほどとされますが、
猫の王様が三日三晩稽古をつけてくれたと言われることもあります。
そして晴れて免許皆伝となると、
王様に耳たぶや尻尾を噛み割ってもらいました。
そのため修行から帰った猫たちは耳が裂けていたそうです。
修行が終わるとそのまま根子岳に留まる猫もいましたが、
自分の郷里に帰る猫もいました。
人里に戻った猫たちはげっそりと痩せているうえに
修行の印で耳も裂けてしまっていたため、見るからに普通の猫とは違っていました。
こうして戻ってきた猫たちは出世して、
その地域の猫たちのボスとなりました。
また化けることもできるようになっていました。
これも、猫又、化け猫伝説と関係していたかもしれません。
耳が裂けている猫はネズミからも恐れられていたと言われます。
また人も、耳の裂けた猫のそばに赤ちゃんを寝かすことはしなかったそうです。
修行のために根子岳に登るのに決まった日はなかったともされます。
また修行に行く猫の条件も地域によって違っていました。
ほとんどの猫が修行に行くとされる地域もありましたが、
例えば次のような条件の猫が修行に行くとされている地域もありました。
- 歳をとった飼い猫
- 7歳になったオス猫
- 体重が一貫目(3.75kg)以上になった猫
昔は今に比べて猫の寿命は短かったですから、
7歳になれば立派に歳をとった猫だったのでしょう。
現代では「体重が3.75kg以上ある7歳以上のオス猫」なんて、
結構たくさんいますね。
根子岳にある猫の王国の猫屋敷
肥後国の猫は7歳になると根子岳へ修行に来るという。
そして人に化けて迷った旅人をおびき寄せ、
宿で散々振る舞った後、寝ている隙に食べるとされている。
根子岳にある猫の王国には何百匹もの猫が暮らしていて、
猫の屋敷もありました。
もしも間違って人間が猫屋敷に迷い込んでしまうと、
姿を猫に変えられ下働きをさせられるという伝説もありました。
有名な伝説としては、
ある時、旅人が根子岳の山道で迷ってしまいました。
日が暮れて、疲れ果て、空腹も極限に達した頃、
思いがけず一軒の大きな家を見つけます。
中から出てきた女性に泊めてもらえるように頼むと、
親切にも食事とお風呂も用意してくれることなりました。
お風呂に入り、旅の疲れをとるよう勧められ、
お風呂へ向かう廊下を歩いていると、別の女とすれ違います。
その女は驚き、小声で早く逃げるよう告げます。
なんでもその女は以前旅人の隣家で飼われていた猫であり、
いつも可愛がってもらっていたお礼に旅人を助けたいと言うのです。
「ここは猫の王の館で人間の来るところではありません。
ここの食べ物を食べたり湯に入ったりすれば、
体中に猫の毛が生えてきて猫になってしまいます。
この話をしたことを仲間に知られれば私の命も危ういですが、
なんとかあなたを助けたいのです。」
慌てて旅人がその家を逃げ出すと、
それに気づいた数人の女たちが柄杓を手に追いかけてきました。
必死に走ってようやく人里までたどり着き、旅人は助かることができました。
ただ女たちが浴びせてきた柄杓の湯は、
旅人の耳の下と足に少しかかってしまっていました。
やがて湯がかかった部分には、猫の毛が生えてきたと言われます。
そして念のため隣家に飼い猫のことを尋ねに行くと、
いなくなった時期はあの助けてくれた女の話と合っていたそうです。
この猫屋敷の登場人物は、皆、人間の女の姿をしていたとされます。
根子岳に修行に行くのは
「体重が3.75kg以上ある7歳以上のオス猫」とされていましたが、
根子岳の中にはメス猫が暮らすメス猫のための場もあったのかもしれません。
猫が集う山は根子岳以外にもあった
このように阿蘇の根子岳には、猫が集って修行をするという伝説があります。
飼い猫が突然姿を消したときなどは、
「きっと根子岳に修行に行っているのだろう」言っていたそうです。
実はこのように猫が修行する山は根子岳だけではありません。
他にも日本の各地にそのような伝説の残る山があるのです。
猫が修行したり、猫の王国があるとされるのは次のような山です。
- 長野県戸隠山
- 木曽御嶽山
- 福島県猫魔ヶ岳 など
化け猫がいたと言われる山ならもっとたくさんあります。
また山ではなく島でも、猫の王国があったという伝説が残る地域があります。
昔の猫は放し飼いで、家の外へも自由に出かけることが当たり前でした。
数日帰ってこないこともあったでしょうし、
もう帰ってこないのかと諦めた頃にひょっこり帰って来るということもあったでしょう。
また、猫は死期を悟ると飼い主の前から姿を消すとも言われました。
可愛がっていた猫が突然いなくなってしまったときに、
きっとどこかで元気に暮らしているのだと信じるたくて
このような伝説が生まれたのかもしれませんね。
今日ヒメちー
うちはたいして広くないのだけれど、
それでも時々ヒメちーを見失う。
たいていはドームの中とか箱の中に入ってるのだけれど。
顔が見えてる時はいいのだけれど、
奥に入っちゃってると保護色で見つけられないのよね。
いつかヒメちーも修行に行くのかしら、と思ったけれど、
修行に行く=うちからいなくなる、なので
永遠に修行の旅には出ないでほしい。
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