漫画「はだしのゲン」に受けた衝撃
漫画、「はだしのゲン」を読んだのは小学生のころ。
授業でアニメも見た。
当時は、話の意味が良くわからず、
ただただ怖かったのを覚えている。
「はだしのゲン」は作者・中沢啓治氏が
自らの広島での被爆体験をもとした自伝的な作品です。
作中のエピソードの多くも中沢氏が実際に体験したこと。
主人公中岡ゲンは9歳。小学校2年のわんぱくざかり。
下駄の塗装を生業にしながら戦争に反対しつづける父と
心やさしい身重の母と姉と弟に囲まれ
貧しいながらもいたわりあって暮らしていました。
昭和20年8月6日、広島に原爆が投下され
一家の生活は文字どおりメチヤクチヤに破壊されてしまいます。
偶然にもゲンは寄り掛かっていた塀が熱線を防いだため、
そして母、君江は二階の物干し台におり、
長いひさしが熱線を防いだ為奇跡的に助かりました。
しかし、階下にいた父、大吉と姉、英子と弟、進次は家の下敷きに。
ゲンは家族を助け出そうとするも果たせず、
父・大吉はゲンに強く生きることを願いつつ、
英子や進次とともに火災に巻き込まれ命を落としてしまいます。
戦中戦後の激動の時代を必死に生き抜こうとする
主人公中岡ゲンの姿が描かれている作品です。
その「はだしのゲン」、長らく平和学習教材に引用掲載されてきました。
「はだしのゲン」の何が問題視されたのか 広島市教委の平和学習教材から外された理由
広島市教育委員会は、市立小学校3年生向けの平和学習教材に引用掲載してきた
漫画「はだしのゲン」を、2023年度から削除し、
別の被爆者体験談に差し替えることを決めた。
理由は「被爆の実相に迫りにくい」からだという。
同市の全小中学校、高校では、2013年度から平和教育プログラムが始まり、
市教委が学齢に応じて作った教材「ひろしま平和ノート」が使われている。
「はだしのゲン」は小学校3年生向けの教材に掲載。
家計を助けようと浪曲を歌って小銭を稼いだり、
栄養不足で体調を崩した母親に食べさせようと
池のコイを盗んだりするシーンが引用されている。
家屋の下敷きになった父親がゲンに逃げるよう迫る場面も使われてきた。
だが、13年度のプログラム開始後、
市教委が設置した大学教授や学校長による教材の改定を検討する会議で
引用された漫画の場面が
「浪曲は現代の児童の生活実態に合わない」
「コイ盗みは誤解を与える恐れがある」などの指摘が出ていたという。
市教委の高田尚志指導第1課長は
「ゲンは市民に広く読まれており、市にとって大切な作品という認識は変わらない」としつつも、
「漫画の一部を切り取ったものでは、
主人公が置かれた状況などを補助的に説明する必要が生じ、
時間内に学ばせたい内容が伝わらないという声があった」と説明する。
23年度版からはゲンの掲載をやめ、
被爆者の体験を親族に聞き取って再構成した教材を使うという。
「主人公のゲンは、僕自身です」と
作者の中沢氏は語っている。
これは中沢氏の戦争体験を否定することにはならないか。
戦中戦後の混乱した世の中を色濃く表した作品だけに
今の子供にはわかりにくい表現が含まれている、
残酷なシーンが含まれているとの指摘もあるが、それが史実だ。
現実は、綺麗ごとだけでは済ませられない。
戦後78年。
戦争を経験された方は、もう相当なご高齢であろう。
この平和ボケした日本では、
かつて戦争があったことを知らない人たちがいると言う。
戦争があったことは授業で習ったし、
ニュースで耳にすることもあるけれど、
わたしも「戦争を知らない子」で、
大人になった今も、「戦争を体験していない人」。
ロシアが進行したウクライナで今まさに戦争が起きていても
それは切り取られたニュース映像で見るだけの物。
宇宙人が侵略して来て、地球を守るために戦争が起きたり、
何の脈絡もなくあらゆるものをなぜかドーン!と爆発させてしまう
アメリカ映画を見ているのと何ら変わらない。
戦争を体験していないわたしたちにはリアルとバーチャルの区別がつかない。
原爆の恐ろしさを伝える世界的な名作「ゲン」への評価としては首をかしげたくなる。
過去にもあった、「はだしのゲン」への冷遇
2012年には、島根県松江市で
「間違った歴史認識を植えつける」として、
学校の図書館に置かないよう求める陳情があった。
松江市内の小中学校では閲覧制限がかけられたが、
翌2013年、日本図書協会の要望もあり制限は撤廃された。
2013年には「差別的表現が多すぎる」として、
大阪・泉佐野市長が学校の図書館から回収を要請。
2014年には同市の校長会が
「読むことさえできなくするのは子どもたちへの著しい人権侵害」として、
回収撤回を要望。これを受け、図書は返却された。
戦争を知らない身で戦争の何たるかを語るな、と言われてしまうかもしれないけれど、
戦争を知らないからこそ知らなければならない。
知りたい人は大人になってから自分で調べればいいよ、というのかもしれないけれど、
子供の頃に見た、理不尽な戦争のショックを忘れずにいることは
大人になってから戦争に関心を持つきっかけになるかもしれないのに。
知る機会を奪われるのは違うと思う。
わたしたち世代はもう、
大人から戦争の話を聞くことはできない。
自分の祖父母が戦中には幼児であったり戦後生まれだから。
戦中、戦後を知る機会を奪われてしまったように感じる。
過去から得る未来はきっとあるはず。
活字離れと言われる中、「漫画だから伝わる」ことがある。
今日のヒメちー
戦争は、小さきもの、弱きものから犠牲になります。
この午後のひと時も味わえなくなるんですね…。
戦争は嫌です。
子供の頃、誰だって戦争は嫌だと思っていた。
けれど大人になった今、戦争をしたい人がいるのだと気付いた。
武力で他国を支配したい人たち。
今の世の中が、本当に平和なのかどうかよくわからないけれど、
平和な世を作ってくれた過去に人たちがいるおかげで
わたしたちはこうして暮らしていける。
それは忘れてはならない。
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