宇宙に行った猫がいることを知っていますか。
フランス航空医学科学研究センターの科学者は十八日、
ネコをベロニック・ロケットで大気圏外に打ち上げ、
パラシュートで地上に回収した。
この実験はサハラのハマギールで行われた。
なおフランスはこれまでネズミを打ちあげる実験を三回行っている。
またネコが大気圏外に打ちあげられたのは世界ではじめてである。
これは1963年10月19日、読売新聞夕刊に載った記事です。
〈ネコ、初の宇宙飛行 仏が成功〉と見出しにあり、
今から60年以上前、猫が初めて宇宙に行ったことを報じたものです。
記事中のべロニック(ヴェロニク)・ロケットというのは、
フランスが所有する観測ロケットの名前です。
また、サハラのハマギールとあるのは、かつてフランスの植民地だった
アルジェリアのハマギールという町のこと。
このサハラ砂漠にある発射場から、
猫を収容したロケットは打ち上げられたのでした。
宇宙へ行った動物たち その非業の死
1957(昭和32)年、ソビエト連邦は犬「ライカ」を宇宙へと送り出しました。
この犬のライカが、世界で初めて宇宙に行った動物と言うことで有名ですが、
実はそれ以前にも、人以外の生き物が宇宙に行っています。
・1947年ハエ。(アメリカ・生存)
・1948年にアカゲザルの「アルバート」。(アメリカ・死亡)
・1949年にアカゲザルの「アルバート二世」。(アメリカ・帰還中に死亡)
・1951年に犬の「デジク」と「ツィガン」。(ロシア・生還)
・同1951年に犬の「デジク」と「ツィガン」、「リサ」。(ロシア・死亡)
そして犬のライカ。
1957年にロシアが打ち上げたスプートニク2号に搭乗していました。
周回軌道上から安全に帰還させる技術は当時まだ開発されていなかったため、
7日後に薬殺される予定でしたが、実際にはストレスと熱中症により
打ち上げから数時間で死亡していたことが2002年に明らかにされました。
ユーリイ・ガガーリンが1961年4月12日に人類初の宇宙飛行を成し遂げるまでに、
少なくとも10匹のイヌが周回軌道に打ち上げられ、
非常に多くのイヌが弾道飛行しました。
世界初・宇宙に行った猫のフェリセット。
フランスのベロニック・ロケットで宇宙にいった猫の名はフェリセット。
当時世界的に有名だったアニメ「猫のフェリックス」に似た、
黒白のいわゆるハチワレ柄の猫。女性名詞のフェリセットと名付けられました。
当時アメリカ、ロシアに宇宙開発分野で後れを取っていたフランス。
国際宇宙研究機関を設立したばかりだったフランスは、
宇宙開発競争に身を投じる上での重要な転機とすべく、
史上初となる猫の宇宙飛行を計画しました。
宇宙に行った最初かつ唯一の猫、フェリセットは
その計画を進める上で集められた14匹の猫の中でも
とりわけ穏やかな性質を思っていたため、実際の任務を行う猫に任命されたそうです。
宇宙飛行猫候補になった猫たちは事前に訓練も受けました。
ロケットの発射時の轟音に慣れるための訓練、
横回転する装置の箱に入れられてグルグル回転させられる耐G(重力加速度)訓練。
猫たちは、当時の宇宙飛行士と大差ない訓練を受けたと言います。
その様子は、フランス国立視聴覚研究所(INA)の公開映像で見ることができます。
こちらはその映像をまとめたもの。
少々閲覧注意です。
猫が人のために、なぜここまでしなくてはならないのか、という気持ちにさせられます。
13分間の飛行でフェリセットは高度157キロメートルまで到達し、
うち無重力状態を約5分経験しました。
ロケット本体から分離されたノーズコーンごとパラシュートで
その後無事に地球に帰還したのです。
打ち上げから3ヶ月後に脳の解剖調査を行うために安楽死させられています。
打ち上げ前、フェリセットの頭には電極が埋め込まれていました。
飛行中の脳の動きを記録して、ロケットで宇宙飛行をすることが、
人間にどんな影響を生じさせるかを調べるためです。
科学的な検証のために、最後は解剖する必要があり、
彼女は宇宙から生還しようがしまいが、どのみち死ぬ運命でした。
いくら宇宙開発に貢献したとはいえ、いたたまれない最期に心が痛みます。
また、フェリセットが任務を終えた直後には別の猫が宇宙に向けて打ち上げられましたが、
打ち上げ時にロケットが爆発したことにより命を落としています。
フェリセットは宇宙飛行に成功した唯一の猫であるにもかかわらず、
長年その認知度は決して高いとは言えませんでした。
フェリセットは訓練を乗り越え、果敢に宇宙に挑み、最大9.5Gに耐え抜きました。
候補だった猫のなかで体重2.5キロととりわけ小さいねこでした。
しかし、ライカをはじめ、1961年に宇宙飛行した米国のチンパンジーのハムなど、
米国と旧ソ連の宇宙競争で脚光を浴びた動物たちの陰に隠れ、
フェリセットの存在は忘れられてしまったのです。
ライカは銅像として不滅になり、ハムは名誉の埋葬をされている。
しかし、フェリセットには何も与えられていない。
彼女に正当な評価を与え、追悼の意を表しなければ。
2017年に行われた「フェリセットの功績を讃えよう」という趣旨の
クラウドファンディング活動により、
2019年にはフランス・ストラスブールの国際宇宙大学に銅像が設置されました。
わたしたちの生活の礎には多くの実験動物の功績があります。
食品、医薬品、化粧品…。
人のために役に立った、と言うような
おこがましいことを言うつもりはありませんが、
動物たちの犠牲の上で成り立っているということを忘れてはなりません。
今日のヒメちー
ヒメは小柄ですし、このように特殊な訓練を受けていますし、
高いところが大好きですが、
もしかしてロケットで宇宙に行く適性があったりするのでしょうか…。
無事帰って来ても死ぬ(殺される)運命と言うのは受け入れがたいです。
…人のためになんて宇宙には行きたくないです。
適性は…まああるかもしれませんが…。
なんだか…ちょっと悲しいです。
偉業であったということは理解できますが、
それは動物でなくてはならなかったのでしょうかねえ…。
フェリセットは自分の運命を受け入れていたのでしょうか。
銅像になることは嬉しいことなのでしょうか。
ねぇやんも悲しいわ。
しかも忘れ去られていたなんて、ひどいお話よ。
人は宇宙に行ったことでまるで神のようにあがめられたのにね。
けれど、こうして知ることができた。
これは大切なことだと思うの。
コメント