福を招く『招き猫』
遥かは江戸の昔から犬や猫はペットとして親しまれてきましたが、
猫は「招き猫」に象徴されるように「福を招く」存在として大事にされてきました。
実は9月29日は「くる(9)ふ(2)く(9)」の語呂にちなみ、
招き猫の愛好家の団体である日本招猫倶楽部が
「招き猫の日」に制定しました。
この日は福を招く猫への感謝の気持ちを表わそうとする記念日。
ではなぜ、招き猫は福をもたらすといわれているのでしょうか?
猫に感謝を忘れない心
かつて養蚕が盛んだった時代には、
養蚕で生計を立てている家庭が多く存在しました。
収入源として養蚕は貴重なものでした。
一方で、養蚕農家を困らせる「天敵」の出現に
頭を悩ませるところも多かったといいます。
実は、その「天敵」は「ねずみ」。ねずみは蚕が大好物。
卵であろうが、幼虫であろうが構わず食べてしまいます。
そんなねずみの存在は、養蚕農家の人々にとって大きな悩みどころだったのです。
そんなところに現れた救世主が「猫」だったのです。
そう、ねずみの敵といえば猫ですよね。
ねずみを食べてくれる猫は養蚕農家にとっては、
まるで神様のような存在だったため、
養蚕が盛んだった時代にはおのずと、
猫の像や碑が神社に奉納されるようになりました。
また、養蚕より以前、穀物をネズミから守るためにも
猫は大活躍したのです。
そして時が経ち、養蚕業が下火になってからも、
猫は福を呼ぶ「招き猫」として人々に大切にされていったのです。
いろいろな招き猫を見比べてみると、
前足の上げ方に違いがあることがわかります。
前足の上げ方でご利益が変わる?
実は、この足の上げ方によって、招き猫に招いてもらいたい「福」の内容が異なるのです。
右前足 ➡「金運」を招く
左前足 ➡「人(客)」を招く
一見どれも同じポーズのように見える招き猫ですが、
上げている前足によって意味が違うことがわかります。
では、両方上げてしまえばいいじゃないかと思う方もいらっしゃることでしょう。
でも、両足上げている招き猫は「お手上げ」のポーズに見えることから、
ご利益がないといわれています。
あまり、欲張ってはいけないということでしょうね。
さらには、あげた前足の高さによっても意味が違うようです。
前足を高く上げているもの ➡ 少し先の大きな福を招く
目の位置くらいの低いもの ➡ 近々起こる小さな福を招く
こうしてあらためて違いを見てみると、
招き猫の人形にはいろいろな意味が込められていることがわかります。
商売繁盛から魔除けまで……、招き猫と色の関係
一般的に多く見られる招き猫は
「三毛猫」がモチーフとなっていて、
白がベースとなり黒と茶色が少し混じっているものが多いのですが、
招き猫の多くが三毛猫であることにはきちんとした理由があったのです。
さらに、色によってもご利益の違いがあります。
白(三毛猫)➡ 広く福を招く。
招き猫はオスをモチーフにしています。
オスの三毛猫は1000匹に1匹くらいの確率でしか生まれない貴重なもの。
そのため、古来より福を呼ぶ貴重な存在とされてきました。
黒 ➡ 魔除け。黒い猫は夜でも目が見えるといわれ、
魔除けとしてのご利益があるとされています。
赤 ➡ 無病息災。赤は麻疹や疱瘡の神が嫌う色とされてきたため、
病を除ける無病息災のご利益があるとされています。
また、最近では、カラフルな招き猫も登場するようになり、
「良縁を招くピンク」や「選挙で票を招く豹柄」などもあるようです。
商売繁盛を願って置かれることが多い招き猫ですが、
様々なご利益を生んでくれる存在として、
自分に合った招き猫を選んで家庭にひとつ置いておくのもよいかもしれませんね。
実はうちにも招き猫が。
この子は左前脚をあげているので、お客を招く?
うちこそ金運アップを願った方がいいのでは…。
招き猫の他に、ままちゃんがわたしの受験の時に買った
お願い猫も。
世田谷・豪徳寺と招き猫
関東に住んでいる人には、
招き猫、と言えば世田谷豪徳寺。
招き猫にはいくつかの由来がありますが、
江戸時代に彦根城二代目藩主・井伊直孝が『豪徳寺』の前を通りかかった際、
この寺の和尚の飼い猫が門前で手招きをしているのを見つけました。
一向は寺で休憩をとろうと寺に入ったところ激しい雷雨となり、
猫のおかげで落雷の難を逃れました。
これが縁となり『豪徳寺』は井伊家の菩提寺になり、寄進も得て栄えました。
住職はこの猫に感謝し、猫の死後、
張り子で猫の姿を作り、招福猫児(まねぎねこ)と名付けました。
『招福殿』には1,000体以上の招き猫がずらりと並び、“招き猫の聖地”としても有名です。
何故、これだけの数の招き猫があるかと言うと、
『願いが叶ったら、ここに招き猫を返すと更にご利益がある』と言われており、
これだけの招福の役目を終えた返された招き猫がたくさん並べられているのです。
豪徳寺境内左側には2006年に完成した五重塔があります。
さすがは『招き猫発祥の地』と言われている豪徳寺です。
よ~く、見てみると、五重塔のあちらこちらにも招き猫が!
写真右側、一瞬猫が迷い込んだものかと…。
この子たちは招き猫ではなくて、猫の彫り物。
他にも境内内にはあらゆるところに猫の姿があります。
一度は行ってみたい、猫にまつわる聖地。
岡山『招き猫美術館』
2020年10月10日に開館27周年を迎えた、岡山にある美術館。
江戸時代のものから美術館オリジナルのものまで
約700体を展示していて、至るところに招き猫がいる、
ネコ好きにはたまらない空間です。
古民家を再生した建物と招き猫がよく合いますね。
世界で一つだけのオリジナル招き猫が作れる「招き猫絵付け体験」も人気です。
愛知『招き猫ミュージアム』
日本最大級の招き猫専門の博物館。
郷土玩具から骨董、日用雑貨まで、“招き猫の日”を制定した
『日本招猫倶楽部』の世話役をつとめる
板東寛司・荒川千尋夫妻の個人コレクション数千点を展示しています。
キャットアーティストによる個展などを行う『スペース29(ふく)』では、
猫をモチーフにしたオリジナル食器などでカフェメニューが楽しめます。
伊勢「来る福招き猫まつり」は今年も開催!
『伊勢神宮』・おかげ横丁一帯では2021年10月16日(土)~10月24日に
「来る福招き猫まつり」を開催。
病除けの赤い招き猫や厄除けの招き猫などが全国から集結します。
新型コロナウイルスが一日でも早い終息へ向かうよう、招き猫にお願いしたいですね。
今日のヒメちー
うちの生きてる招き猫は…手はあげないわね。
手をあげずとも、ヒメの存在が福を招いているのです。
そ、そうね、ヒメちー、
なかなかいい事言うじゃない。
うちの招き猫がゆっくり寝てる姿だけで、十分幸せだわ。
この寝顔が福を呼んでくれますように。
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