時代によって変わるパンの食感の好み
昨日の続き記事になります。
まだ読んでないよー、と言う方はこちらからどうぞ。
パンには様々な種類や名前がありますが、
食感という点でも、気になる違いがあります。
主に「ふわふわのパン」と「硬いパン」。
ここに近年では「もちもち系のパン」が加わりました。
同じパンですが、この差って、いったいどこから生まれるのでしょうか。
パンを作る際には、基本材料と言われるものがあります。
小麦、水、酵母、塩の4点は必要最低限のものです。
これに、副材料である糖、油脂、乳製品、卵などを加えることによって、
パンの食感を変えることができます。
いわゆる「ふわふわのパン」というのは、この副材料を使ったもの。
その中でも油脂は、パンをソフトな食感にしてくれるので、
「ふわふわのパン」には油脂がたくさん使われています。
また、硬いパンというのは、バゲットやカンパーニュのように、
小麦粉と塩、水、酵母の
シンプルな基本材料でゆっくり発酵させて作るものです。
もちもちのパンには、でんぷん質の多い小麦や
多加水と呼ばれる、水分の多い配合のものが多く、
中にはでんぷんや白玉粉などを入れて作るものもあるようです。
日本人はなぜ「もちもち」が好きなのか
日本人は諸外国人に比べ、
「もっちり」あるいは「もちもち」とした食感を好む傾向があるそうです。
「もっちり」、「もちもち」と聞いてまず思い浮かべるのはお餅。
「もっちり」、「もちもち」とは、
もともとは餅に対する食感を表現するための言葉であったと考えられます。
こうしたお餅の食感は、餅米を突いて
粘りのある柔らかな状態にすることによって生まれます。
まずは米からつくられる餅の食感が前提としてあって、
やがてその食感が他の食品にも広げられることで
「もっちり」、「もちもち」と表現されるようになっていったことが想像できます。
つまり日本人にとって「もっちり」、「もちもち」の絶対値は
餅の食感にあると言えるでしょう。
パン文化が定着してもこの「もっちり」、「もちもち」、
これは譲れない好みなのだと言えます。
もちもちはパスタにも
イタリアの国民食ともいえるパスタは、
イタリアでは「アルデンテ:al dente」で茹でるのが常識であるとされています。
アルデンテを直訳すると「歯に~」という意味であって、
これはパスタ麺の茹であがりの「歯ごたえのある状態」を示す言葉です。
イタリア人にとって麺がオーバーボイルド(茹ですぎ)であることは好まれておらず、
総じてパスタはアルデンテであるべきとされています。
さらに細かく見て行くと、
イタリアの北部と南部でもパスタの好みの硬さは異なっているようで、
南部になるほどより固い茹で上りが好まれているようです。
また、イタリアでは「茹ですぎパスタは消化に良くない」とまで言われているそうです。
これに対し、日本には食べ物に対して
「腹持ちが良い」という表現も存在しているほどです。
これは食後に時間が経ってもすぐにはお腹が空かないという、
ある意味、食品に対するポジティブな表現ですが、
これはイタリアで言う「消化しにくい」という
ネガティブ表現とも表裏一体となっているようにも思えます。
「腹持ちが良い」代表的な日本の食べ物はやはり餅になるのですが、
このように「もっちり」とした食べ物は
「腹持ちが良い = 消化が遅い」という利点があるのかもしれません。
パスタは日本人の嗜好である「もっちり」を説明するのに
非常に良い例となっているのかもしれません。
パンはもともと欧米由来の食べ物ですが、
戦後、日本でも広く普及し、一般家庭でも日常的に食べられるようになりました。
夫婦共働き、朝は時間がない。
朝食にはパンを食べるという家庭は多くあることでしょう。
ところがパンは「すぐにお腹がすく、腹持ちが悪い」と言うイメージが先行し、
お昼まで持たないと言われるようにもなりました。
子供たちも給食ではパンを食べる。
仕事をもつ大人でも昼食には手軽に食べられるパンを好む人も多く、
そうなるとかなりの人が1日に2食はパンを食べているという
食生活を送っていることになる。
こういう理由から、パンにも「もっちり」と「腹持ち」を求め、
特にご飯の代わりとも言えるであろう食パンにおいては
「もっちり」を打ち出した商品が人気となっているようです。
昨日の記事で、関西は厚切りを、
関東では8枚切りなどの薄切りが主流であったと書きましたが、
ここ数年、関東でも4枚切り、5枚切りを多く見かけるようになりました。
これも厚切りだともっちりする、と言う食感を求めた結果かもしれません。
また京都は和食の中心地であるというイメージがありますが、
実はパンの消費量も高く、京都人はパン好きであると言われているのですよ。
山型に焼かれた食パンと四角の食パン。山型のほうがお得?
食パンには主に「山型食パン」と「角型食パン」があります。
並べて比べてみるとよくわかるのですが、
山型食パンのほうが高さがあります。
高さがある分、山型食パンのほうがお得な気分になりますが、
これは焼き方が違うために起こることで、
重量はやはり「一斤」なのです。
山型食パンはパン生地を型に入れて蓋をせずに焼きます。
そのため焼き上がりは山のようにこんもりと盛り上がります。
山型食パンは蓋が開いているので、生地は上に伸びます。
山型パンをよく見ると、「山」の盛り上がり方がそれぞれ違うことに気づきます。
ふんわり柔らかな食感を楽しめ、風味がよいのが特徴です。
反対に角型は蓋をして焼くので、四角い形状で焼き上がります。
角型食パンは蓋をして焼くため水分の蒸発が少なく
しっとりもっちりした焼き上がりになります。
また、全方向に壁を作って、膨らむ生地を押さえつけるように焼かれているので
皮(クラスト)がしっかり焼かれて厚くなります。
山型パンのほうが価格を高く設定しているお店、メーカーがあるので、
山型のもののほうがなんとなく高級だと思ってしまいます。
ところがこれは全く同じ生地、重量の場合が多いのです。
山型のパンに比べて角型のほうがオートメーション化しやすいため生産性が高く、
輸送のコストも抑えやすいため、
小売店では山型食パンのほうが価格が高くなる傾向があります。
材料も配合も変わらないのに味わいが違う。
パンって面白いですね。
山型食パンと角型食パンが生まれた理由。
同じ材料で同じ工程、焼き方が違うだけで
なぜ山型食パンと角型食パンが存在するのでしょうか。
山型食パンは「イギリスパン」とも呼ばれるように、イギリスが発祥のパンです。
ブリキ(tin)の型に入れて焼くことからティンブレッドと呼ばれたり、
生地の色によりホワイトブレッド・ブラウンブレッドと呼ばれたりすることもあります。
角型食パンはアメリカが発祥だと言われています。
「プルマンブレッド」と呼ばれることもあり、
これはアメリカのプルマン社の鉄道車両にちなんで名づけられたそうです。
角ばった外見はたしかに列車を思わせますね。
今や当たり前のように生活にあるパン。
パンも深く掘ってみると面白いことがわかりました。
パンを食べるとき、ちょっとこのお話を思い出していただければ嬉しいです。
今日のヒメちー
日本人がもっちりを求めるのは、
なにも食べ物だけではない。
そう、動物にだって。
はあ~。
極上のもっちり。
まあ、ヒメちーの場合はほとんど骨と皮の偽もっちりだけど。
ひとのおちりを見て偽物だのなんだの、
本当に失礼なねぇやんですね。
ねぇやんの体がもっちりする呪いでもかけたろか…。
そういえば、ここまで日本人はもっちり好きだというのに
なぜかスタイルはしゅっとしたのを求めるわね。
不思議ー。
もちもちしたスタイルが標準になればいいのに…。
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