猫は猫でも『化け猫』と呼ばれた猫たちの話。

 

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猫又、化け猫、似てるようで似ていないふたつの猫たち

浮世絵にも多く描かれてきた猫。

その浮世絵には、生きた猫だけではなく、

猫の妖怪、化け猫も多く描かれています。

 

日本の猫の妖怪には、二つの猫が出て来ます。

一つは、20年(諸説あり)生きた猫はしっぽが二つに割け、猫又化すると言うもの。

もう一つは、猫の妖怪、化け猫。

…それはハロウィン?

どちらも、しっぽは二つに割け、

行燈の油をすすり舐め、

人語を話す、という共通点があります。

猫又は飼い猫が寿命を全うしたのちに姿形を変えるものとされていますが、

化け猫は、猫の妖怪。

三代豊国画、化け猫の図

 

非業の死を遂げた猫や、

人による殺戮などで死を迎えた猫が変化するもの。

この二つの猫は混同されがちですが、

全く異なるものです。

生善院の化け猫はまさに人に恨みを持つもの。

 

死したのちも人への恨みつらみを執念深く覚えていることから、

「猫は7代祟る」「猫の呪いは末代まで」と言われるようになりました。

 

 

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化け猫の民間伝承

老いたネコが化け猫になるという俗信は日本全国に見られます。

日本俗信辞典 動・植物編によると、

茨城県や長野県では12年、沖縄県国頭郡では13年飼われたネコが化け猫になるといい、

広島県山県郡では7年以上飼われたネコは飼い主を殺すといわれています。

猫の飼い始めに、あらかじめ飼う年数を定めておいたという地方も多いと言われています

また地方によっては、人間に残忍な殺され方をしたネコが怨みを晴らすため、

化け猫になってその人間を呪うなど、老いたネコに限らない化け猫の話もあります。

茨城県の一部では、猫が黒い雲に乗って、

遺体にいたずらしにくるという伝承があり、

寺の住職が葬儀にいった際、黒い雲が発生し、

読経をすると、棺の上を黒い物が飛び跳ねたため、

払子で打つと、悲鳴を上げ黒い雲をとともに去って行った。

その後、帰宅すると飼っていたクロという名の黒猫が片目になっていた。

住職は猫が魔物で、いたずらするものと知っていたため、

檀家に、枕許に刃物を置くよう、伝えたとされています。

老いた猫が怪異を為すという俗信は日本に限ったことではありません。

たとえば中国浙江省金華地方では、

人間に3年飼われたネコは人間を化かすといわれていました。

河鍋暁斎記念美術館

 

特に白い猫が化けやすいといって白い猫を飼うことを忌む風習が出来ました。

人間を化かす能力を得る際には月から精力を取り込むと言われたことから、

月を見上げるしぐさをした猫は、

どんなに可愛い猫でもその場で殺したこともあったと言われます。

化け猫のなす怪異は様々に伝えられていますが、

主なものとしては人間に変化する

手拭いを頭にかぶって猫おどりする

人間の言葉を喋る、人間を祟る、死人を操る、人間に憑く

山に潜み、オオカミを引き連れて旅人を襲う、などと言われてるようです。

江戸時代には尾がヘビのように長い猫が化けるという俗信があり、

尾の長い猫が嫌われ、尾を切る風習もあったそうです。

日本の猫のスタンダードは

『ジャパニーズボブテイル』と呼ばれ、しっぽが丸く小さなものです。

猫図鑑より

 

これは、江戸のころ、尻尾の短い猫が好まれたことに由来するのかもしれません。

 

 

なぜ化け猫だけで化け犬はいないのか?

ネコが妖怪視されたのは、ネコが夜行性で闇夜に眼が光り、

明るさによって瞳の虹彩の形が変わる。

 

暗闇で背中を撫でれば静電気で光る、

傷口を直すために自身の血を舐めることもある。

足音を立てずに歩く、温厚と思えば野性的な面を見せることもあり、

犬と違って人の言うことなど聞かず、

爪の鋭さ、身軽さや敏捷性といった性質に由来すると考えられているようです。

動物の妖怪は猫以外にも、執念深いヘビ、変身能力のあるキツネ、

民話『かちかち山』などで人を殺すタヌキの凶暴性などがあります。

あ、キツネやタヌキはさらに人を化かすとも言われていますね。

江戸時代に入って都市や町場が形成され、

人間たちが自然から離れて生活することが多くなると、

そうした野生動物の妖怪としての特徴が

人間の身近にいながらも神秘性を秘めた動物である猫のものとして語られることが多くなり、

次第に化け猫のイメージが作り上げられていったのではないかという見方もあります。

化け猫の話として有名なものに、

「鍋島の化け猫騒動」と言うものがあります。

これは、長くなりますのでまた次回。

 

 猫の名誉挽回

化け猫の俗信として「行灯の油を舐める」というものがあり

江戸時代の百科事典とも言われる『和漢三才図会』にも、

猫が油を舐めることは怪異の兆候とあります。

歌川貞秀「東海道五十三次之内 岡崎」ボストン美術館所蔵

 

これは、行灯などの灯火用に安価な鰯油などの魚油が用いられていたためで、

猫がそうした魚油を好んで舐めたためと見られています。

また、当時の日本人の食生活は穀物や野菜類が中心であり、

その残りを餌として与えられる猫は肉食動物ながら

タンパク質や脂肪分が欠乏した食生活にありました。

それを補うために行灯の油を舐めることがあり、

行灯に向かって二本足で立ち上がる姿が妖怪視されたものではないでしょうか。

 

 

今日のヒメちー

二本足で立ちあがるのは得意ですが、妖怪ではありません。

猫も立つのが得意な事そうじゃない子がいるのよね。

猫踊りも得意じゃない。

手ぬぐいはかけてないけど…。

でも何よりはその前手てよね。

いかにも恨めしやー、って感じ。

「幽霊の正体見たり枯れ尾花」と言う句があるように

猫の可愛いしぐさも、

恐怖心と共に見ると、怖いしぐさなのかもしれませんね。

 

  

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