猫の都市伝説の一つである「アワビを食べると耳が落ちる」
猫のチャームポイントの一つである耳。
猫の耳は、人ていうところの外耳の部分が、
驚くほど薄くできています。
猫に食べさせてはいけない食材の一つに「アワビ」があり、
その理由として「耳が落ちてしまうから」という説明がよくなされます。
この風説の出どころとして最も古いものは、
江戸時代の1712年に発行された
百科事典「和漢三才図会」(わかんさんさいずえ)内にある以下の一節です。
猫、鳥貝の腸を食へば、則ち、耳欠落す、
往々之を試むるに然り
(猫がからす貝のはらわたを食べると耳が落ちてしまうので与えてはいけない)
その後に発行された医学書「俗説正誤夜光璧」(1728年)の中にも、
「猫児これを食へば耳が落つるということ虚談にあらず、
烏貝の腸を食うたる猫は、
耳の尖より火にて焦がしたるやうになりて漸々に欠け損じ、
耳の根ばかり残りて、画ける虎の耳のごとくなるなり」という表現が見られます。
また江戸時代の絵入り娯楽本「朧月猫の草紙」の中には、
医者に扮した猫が、耳の不調を訴える患者猫に対し
「猫にからす貝を食べさせてはいけません。
食べればできものができて耳が落ちますよ」と説く場面が描かれています。
こうした文献資料から考えると、少なくとも江戸時代中期には
「アワビを食べると猫の耳が落ちる」という俗説が成立していたものと推測されます。
耳が落ちる、とはこれまた物騒な。
もしも猫に耳が無かったら…。
ドラえもん?
ドラえもんの耳がない理由は諸説ありますが、
ネズミに耳をかじられるという設定になっています。
2122年8月30日、ドラえもんが優雅に昼寝をしていたところをネズミに襲われました。
そして、耳を失い、この時からネズミ嫌いになります。
未来の街を訪れた際には、
耳がないことで、「狸」と間違われ、
ドラえもんはこの耳の無い姿をコンプレックスと感じています。
そのくらい、猫にとっては耳は大事なもの。
「アワビを食べると耳が落ちる」と言う通説は本当なのでしょうか。
原因はここにあった。光過敏症
実は、人間がアワビなどの中腸腺(肝膵臓)を食べると、
季節によっては皮膚炎などの中毒症状が生じることがあるとの学術報告があります。
アワビの餌である海藻類の光合成に必要な
葉緑素のクロロフィルの分解成分であるフェオホルバイドが原因といわれており、
とくに日光に当たりやすい体の部分が痒くなったり炎症を起こしたりします。
同じことが猫にも起こりえます。
猫がアワビを始めとした貝類の内臓を食べると
全身を毛でおおわれた猫の場合、
毛の比較的薄い耳が日光に当たるとかぶれてきて、
痒くてかきむしっているうちにただれて、
やがてボロボロになってしまう、と考えられるのです。
中にはあさりやホタテなど猫が食べられる貝もありますが、
特にアワビ・トリガイ・サザエ・トコブシなどは毒成分を持っており、
光線過敏症の原因になってしまうと言われています。
また、フェオホルバイドは海藻がよく成長する春先に、
より蓄積されるとみられ、
なぜ、春先にだけ中毒成分が蓄積するのか、
そして、人や猫がどれだけの量を摂取すると中毒症状を起こすのかも不明なようです。
紫外線は実は春先に最も強くなることと関係がありそうですね。
東北の漁師さんたちの間では、
「猫にアワビの肝は与えてはならない」と言うのは
常識なのだそうです。
こうして聞くと、アワビはよくない貝のように思われてしまいますが、
反面、アワビの貝殻は石決明(せっけつめい)という名の漢方としても用いられます。
アワビ、トコブシなどの貝殻を洗浄・乾燥させたもので、
肝機能の改善やかすみ目・疲れ目、
視力回復や眼病などに薬効があるとされます。
光を感受する感覚器官である目や、
その目や皮膚の機能と関連の深い肝臓と、
アワビに含まれる成分とは、古くから関係があることが経験的にわかっていたようで、
妊婦がアワビを食べると目のきれいな(視力のよい)子が生まれる、
肌の美しい子が生まれる、という言い伝えは日本各地に残ており
それも特にキモを食べるとよい、とも言われていました。
まさにこれは光過敏症を引き起こす成分が、
逆に胎児の目や皮膚の形成発達に寄与する成分でもあるということなのでしょうか。
「猫がアワビを食べると耳が落ちる」と言う通説は、
「猫にアワビの肝を与えてはならない」であり、
アワビやサザエに含まれる“フェオフォーバイド”という物質が、
皮膚炎の原因になる。
その皮膚炎をかきむしり、最悪、耳が欠損(落ちる)してしまう、と言うことのようです。
今日のヒメちー
猫から耳が無くなるとは由々しき事態。
神に愛されてこのスタイルを保つ猫にとって、
どのパーツもなくなってはいけないものです。
あ、ちょっと、逆光ですよ。
ちゃんと可愛く撮ってください。
そうそう、そんな感じです。
まあ、つまり何が言いたいのかと言うとですね、
ひとのほうが気をつけなさい、と言うことです。
そうすれば猫は、
この可愛い姿を維持できるというものです。
食べてはいけないものを理解して、
ひとが気を付けて、猫に食べさせるものを選ばなくっちゃだわね。
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