飼い犬・野良犬・野犬。その区別は人間がしたもの。
犬は古くは縄文時代から、わたしたちと共に暮らしています。
江戸の頃の犬は、「誰かの所有物」と言うことではなく、
周囲の人が皆で気にかけ、守り、共に暮らし、
長く人の良き隣人として暮らしてきました。
今で言う、地域猫のような存在でしょうか。
飼い犬と野良犬の明確な区分はなく、江戸時代人々は野良犬に残飯をやって、
野良犬は生ごみを処理してくれ、winwinな関係にいたそうです。
明治以降ペットという考えが入ってきて、ペットか野良か。
それ以外の動物の存在を否定するようになり、
戦後は「狂犬病予防法」に沿って野良犬を捕獲するようになりました。
そして、スペースが足りなくなると殺処分という風潮が定着していきました。
昭和40年代くらいまでの生まれの人は、
野良犬に追いかけられる、と言う経験をした人も少なくないかと思います。
昭和48年に制定された「動物の愛護及び管理に関する法律」(動物愛護管理法)により
狂犬病の発生・蔓延を予防するため、狂犬病予防法第6条を根拠として、
野犬は積極的に保健所や動物保護施設の職員に捕獲されることになりました。
日本で野犬は保健所や動物保護センターによって積極的に保護され、原則処分されます。
今、なぜ野犬?和歌山で野犬が増え続けている。
野犬と野良犬の明確な定義はありませんが、
野犬は野に暮らし、野の生き物をとり、生活します。
野良犬は、市街地に住み、人からエサをもらう、生ごみを漁る、などの生活をしています。
これも野良猫とノネコの違いによく似ていますね。
和歌山の景勝地・雑賀崎。この港町に多数の野犬がうろついていて、
地元住民からは不安の声が聞かれているそうです。
和歌山市西部に位置する雑賀崎。
斜面に住宅が密集する景観から「日本のアマルフィ」とも呼ばれる港町だそうです。
この地に、野犬が見られるようになったのは10年ほど前からだそうです。
現在、雑賀崎では40~50頭ほどが生息しているとみられます。
けが人は今のところ出ていないということですが、
野犬をめぐっては、生ごみを荒らされたり、
住宅の敷地内にフンをされたりするなどの被害がたびたび発生しているということです。
ごみ置き場を木の板で囲うなどの対策はしていますが、効果は限定的だといいます。
さらに、夕方になると毎日必ず起きる現象が。
午後5時、屋外スピーカーから防災行政無線の放送が流れ始めると同時に
野犬たちは一斉に激しく吠え出します。辺り一帯に野犬の鳴き声が響きます。
毎日この放送が終わるまで、1分以上吠え続ける犬たち。
日によっては、夜中にも激しい鳴き声が続くといいます。
住人の懸念は犬に襲われること
犬は集団で狩りをする動物です。
時には自分たちよりも大きい獲物ですら抜群のチームワークで仕留めることがあります。
牙を持たず、鋭い爪をもたない人間は
犬にとって、狩りやすい獲物。
また、人を襲うつもりはなくとも、
人がえさになるものを持っているということを学習してしまえば、
やはり人などたやすく襲われてしまうのです。
日本は世界でたった11しかない狂犬病清浄国ですが、
それは狂犬病の予防注射が義務付けられ、広く行われているからです。
では野犬はどうでしょう。
野犬は狂犬病予防注射をしていません。
野犬の群れに狂犬病が蔓延しているという事実もあるかもしれません。
もしも狂犬病に感染した野犬がいれば、
野犬たちの行方は保護ではなく撲滅へと変わります。
もし野犬と出くわしてしまったら…。
間違っても構おうとしたりしてはいけません。
もしそこで事故が起きればそれは、
その犬の命を奪うことになります。
なぜ野犬が増えたか。「飼い犬が捨てられたもの」市は保護活動に乗り出す。
そもそもなぜ野犬はこの地域に住み着くようになったのか。
和歌山市動物愛護管理センターでは、
「もともと野犬は、飼い犬が捨てられたものから増えたと言われています。
(雑賀崎は)地形的にも急峻な崖になっています。
人が近づくこともできないということから、あそこで生息しているのではないでしょうか」と話す。
犬は閉経と言う概念がなく、頭数は減るものの
一生涯子犬を産むことが可能なのだそうです。
また、年に二度ほど発情期を迎え、
5~10頭の子犬を産みます。
ネズミ算と言う言葉がありますが、犬もまた、あっという間に増えてしまうのです。
こうした状況に市も黙っているわけではありません。
野犬の保護活動のためほぼ毎日パトロールをしています。
犬を発見し、囲い込もうと職員も一斉に走り出しますが、
職員を見つけた瞬間、猛スピードで走りだし、あっという間に姿を消してしまうのだそうです。
犬は賢く、学習する生き物です。
人が立ち入りにくい山の斜面や茂みに逃げるのでなかなか保護しにくいと言います。
市では檻の設置もしていますが、警戒心が強く、多くても月に3、4頭ほどしか入らないといいます。
犬はTNRできない。人が再び一緒に暮らすしか野犬が生き残る道はない。
猫は、TNR、T=TRAP(つかまえる)N=NEUTER(不妊手術する)
R=RETURN(元の場所に戻す)と言う保護の方法があります。
地域猫として、生きていく道が残されているのです。
犬の場合は、狂犬病予防法という法律が適用されます。
犬は特に法律で厳しく管理されているなかでは、
犬が群れで自由にしているという状態は問題があります。
それゆえ、猫では去勢や避妊をしてまた地域に戻すということが可能でも
犬は法律によって、本来誰かが必ず飼育していなけばならず、
不妊去勢手術などをしたとしても猫のように再び地域に放すことができないといいます。
警戒心が強い成犬の引き取り手はなかなか決まらず
市が保護した犬は、新たな飼い主を見つけようと定期的に
犬や猫の譲渡会を開いています。
和歌山市は月に2回譲渡会を行っていて、6月は
パトロールで保護した子犬1匹に新たな飼い主が決まりました。
しかし、成犬になった野犬は人への警戒心が強く、
今年度、市の譲渡会で引き取り手が決まった野犬は、
子犬が6匹なのに対し、成犬はまだ1頭だといいます。
和歌山市動物愛護管理センターでは問題解決には
「飼ったからには責任をもって最後まで飼っていただく、これが一番大事だ」と言います。
減らす方法がなければ、増やさない方法を考える。
それしか術はないと思います。
今日のヒメちー
人は、動物を保護もしますが、遺棄もします。
人に飼いならされ、
獲物を獲る術を知らない動物はどうしたらよいのでしょう。
捨てられた犬猫だって、生きていくのに必死。
人の生活のことなどかまってはいられません。
野にいても街にいても、それは犬にとっては自然なことなのです。
悲しいことですが、こういう問題に対してヒメは無力です。
動物を舐めてると、いつか大きなしっぺ返しが来るかもしれませんよ。
もしも本当に、和歌山のこの野犬が、
人に飼われていて、捨てられたのであれば、
もう人のことなんて信用できないよね…。
できれば、もう一度人の手で飼われて欲しいけれど、
それは無理な話なのかもしれない。
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