干支と星座からその座を奪われたねこ。
猫は生物界でもまれにみる特別な存在です。
優雅で美しく、しなやかでしたたか。
けれど、危険を冒すことをいとわず、
無謀ともいえる高いところに登ってみたり、
時には遊びに夢中になりすぎて、
家具に頭をしこたまぶつけることも。
猫と暮らし始めたばかりの人は、
この衝撃でおバカさんになってしまったのではないだろうかと心配することもあるかと思います。
彼らの存在は、わたしたちの目を惹きつけて離しません。
その証拠にメディアを通して、猫の姿を見なかった日があったでしょうか。
答えは「ありません」、です。
そんな猫でさえ、未だ入り込めない領域があります。
それは皆さんもよく知っている『星座』と『干支』。
干支になぜ猫がいないか、については
こちらでまとめてありますので、ぜひご覧になってください。
では、星座は…?
88星座の中に存在しないねこ座
紀元前30世紀までさかのぼる長い星座の歴史の中で、
特に16~18世紀は、星座新設の黄金期であったと言われています。
それまで星座と言えば、北半球で見られるもののみ。
大航海時代に出会った南半球の星々を、
珍しい生き物や航海で使うアイテムに見立てた星座で埋め尽くしただけではなく、
天文学者達が趣味で星座を作ったり、
パトロンに星座をささげたり、
当時には目新しかった機械を星座にするなど、
比較的フリーダムに星座が作れる時代だったのです。
古来より人々は、夜空の星をつなぎ合わせて様々な形を想像しました。
古代エジプトの遺跡で、星の並びを人などに見立てた図が発見されています。
![古代エジプト 星座 壁画](https://i1.wp.com/mainichihime.com/wp-content/uploads/2023/08/44d29d2792be3bad9a9ed98c7bbb20d6-3.jpg?resize=500%2C509&ssl=1)
古代エジプトの神殿で発見された、射手座が描かれた壁画。Photo: University of Tübingen
人々は、夜空の絵画に物語を添えました。それが星座の始まりです。
乱立する星座を今の88個の星座に定めたのは
アメリカの天文学者エドワード・ピッカリングです。
1908年に刊行した『ハーバード改訂光度カタログ』。
その後、この星表を基に、
1922年に全天の星座は88個とされ同時にその名称が承認されました。
その中に猫座の姿はありません。
ハエ座やカラス座、クマに至っては大熊と小熊がある。
コップやコンパスなど、生き物ではないもの、
「画家」のような大雑把な星座まである。
なのに「ねこ座」は存在しません。解せぬ。
ラランドの『ねこ座』
天文学の歴史を紐解くと、88星座に制定される以前にはいろんな星座がありました。
その中には、我らが猫の星座はあったのです。
『ねこ座』を設定した人物の名はジョゼフ=ジェローム・ルフランセ・ド・ラランド。
ラランドはハレー彗星の周期を正確に算出するなど
惑星の運動理論を研究していましたが、大の猫っかわいがりでもありました。
そのため自身のペットであった猫をモデルに、星座にしたようです。
ねこ座(猫座、Felis)は、春の星座の1つ。略符 Fel、属格 Felis。
うみへび座の下にひっそりと存在する比較的小さな星座であり、
三等星以上の目印となるような明るい星が存在しないために、
光害の激しい場所では全く把握できません。
ねこ座α星は2018年に国際天文学連合によって
正式にFelis(フェリス、「ねこ座」の学名)という固有名が承認されていますが、
すでにいる誰かを蹴落としてまで88星座の中に入ろうとはしません。
なんと奥ゆかしい。
ギリシャ神話時代にも「ねこ座」はあった。
ギリシア神話によると、
オリンポスの神々がナイル川沿いで宴会を開いていたら怪物テュポンが現れ、
あわてた神々はそれぞれ動物に姿を変えて逃げた。
その際に月と狩りの女神アルテミスが化けたのが猫であったといわれています。
![女神アルテミス 猫](https://i0.wp.com/mainichihime.com/wp-content/uploads/2023/08/0e4aae38a1f5494592124a884058f7cb-2.jpg?resize=477%2C615&ssl=1)
アルテミス像 ルーブル美術館蔵
彼女は純潔を尊ぶ処女神としての誓いを立てているために、
テュポンが封印された後も用心してなかなか出てこようとしなかった。
そのためテュポン封印記念に宴会に参加していた神々が
テュポン遭遇時に化けていた動物を星座にすることになったとき、
うみへび座の後ろで身を潜めて隠れている用心深い猫として
天空に上げられたのがねこ座の始まりとされています。
『ねこ座』が88星座からも歴史からも消えた理由
天文学者・ラランドの功績は高く、教育者としての評価の高い人物でした。
彼の名はラランド21185(地球より8.21光年先にある恒星)や
月のクレーターに残されています。
様々な業績を残し、人生を天文学に捧げた彼が設定した『ねこ座』が
歴史の闇に消えていったのにも理由があります。
数々の歴史が証明しているように、
世の中は利権や利害関係が複雑に絡み合って出来ています。
古代なら王様の自己顕示欲によって。
近年ならば利権や名誉などがそれにあたります。
そんな人間社会において、彼が『ねこ座』を設定した根拠は無謀でした。
その理由は「やっぱり猫が好き」。
大の猫好きだったラランドの考えは、ボーデ(ドイツの天文学者)と
アメリカなどで支持されたものの、
個人的過ぎるという理由から『ねこ座』は歴史の闇へと消えてゆきました。
また、猫嫌いな天文学者たちは
この星座の存在自体を抹殺しようという陰謀を巡らせているのです。
月刊天文の1992年5月号に、こんな投稿がありました。
ねこ座は「うみへびに食べられて消滅したらしい」。
ねこ座の位置はうみへび座とポンプ座の間。
![ねこ座 猫座がない理由](https://i1.wp.com/mainichihime.com/wp-content/uploads/2023/08/dda9bb331e5adc2b5a3ca1088fa71280-2.jpg?resize=500%2C372&ssl=1)
毎日小学生新聞より
猫と蛇は天敵、捕食関係にあるもの、笑えない冗談です。
権力や時の勢力に翻弄されたねこ座。
裏を返せば、世界有数の有力者の口添えが有れば、
ある日突然、『ねこ座』が89番目の星座として定められる未来があるのかも知れません。
山猫は猫?猫じゃない?
現在の家猫の始祖は山猫。
現代の88星座の1つにやまねこ座(やまねこざ、Lynx)があります。
17世紀末に考案された比較的新しい星座です。
干支では虎がいるからいいじゃないの、と言われ、
星座では山猫がいるからいいじゃない、と言われる。
なんだか理不尽。
当の猫本人はそんなこと、気にしちゃいないのだろうけれど。
今日のヒメちー
猫が星座にいないとは…。
けれど、まあ、いいじゃないですか。
こうして常に天空(高いところ)から
下々の暮らしを見つめていますし、
大体夜にしか見ることのできない星座に
大きな執着はありません。
こうして、昼も夜も。
猫と言うものは人々の頭上にいるものなのですよ。
たとえ星座にはなれなくても。
ええ。
犬があって猫がないのは理不尽だとは申しません。
猫のほうが歴史は古いですけどね。
ん?なんだかちょっと根に持っているような…。
コメント
これだけの地位を獲得して、どちらもないってのは、最早世界の七不思議ですよね( *´艸`)
猫座が個人的過ぎるって批判、どの星座も無理繰り感満載の中、良く言えたもんだって思ってしまいましたよ(;^_^A
白鳥座とか、さそり座とかはギリそれっぽく見えないこともないですが、オリオン座とかどうやって見ても、人の形には見えない( ̄▽ ̄;)