ノアの箱舟に乗り込もうとした猫の悲運…
世界中には、いろいろな伝説が残されているものです。
そういった中には、動物が登場するものも数多く残されています。
そしてときには、私たちにとって身近で愛らしい相棒、
猫が登場する話もあります。
来るべき大洪水に備えて…箱舟に乗り込もうとした猫の悲運
旧約聖書の一節『創世記』。
ノアの箱舟についての話は、ここに記述されています。
あるとき、神々は人間世界の堕落を嘆き、
一度大洪水を起こして人間を滅ぼそうと考えました。
そしてこの計画を、ノアという男に伝えます。
ノアは洪水によって他の命も一緒に押し流されることを知り、
家族総出で箱舟を作りました。
そして、世界中のありとあらゆる全ての生き物のつがいを
一組ずつ箱舟に乗せ、種の存続を図ったのです。
果たして間もなく洪水は実際に起こり、
ノアとその家族、そしてたくさんの動物の、
たった一組のつがいだけは難を逃れることができたといいます。
![ヤコポ・バッサーノ 「ノアの箱舟に入っていく動物たち」](https://i0.wp.com/mainichihime.com/wp-content/uploads/2021/11/66c19942ab4ba346fdb64ccc04cde373-11.jpg?resize=500%2C365&ssl=1)
ヤコポ・バッサーノ「ノアの箱舟に入っていく動物たち」
世界中を覆い尽くした水は、半年ほど猛烈な勢いを保ったまま、
ノアの箱舟をアララット山の山頂まで押し流し、
箱舟はそこでようやく停まりました。
ほどなくしてノアは、箱舟から鳩を放しました。
すると鳩は、オリーブの葉をくわえて舞い戻ります。
地上があることを察したノアは、もう一度鳩を放します。
すると鳩は、もう二度と戻っては来ませんでした。
鳩は、水が引いた大地で、新しい生活を営むことにしたのでしょう。
と、ここまでは以前記事にしたことがあります。
こうして世界はもう一度生まれ変わったわけですが、
実はこの話の冒頭で、猫が踏んだり蹴ったりな目に遭っていたのです。
話はノアは箱舟を完成させて、
世界中から様々な種類の動物を一組ずつ乗船させていた頃に遡ります。
洪水を目前に控え、既に多くの動物が箱舟に乗り込んだ後、
遅れて駆け込んで来たのはねずみと猫でした。
きっと猫は逃げ回るネズミを追いかけていたのでしょう。
これって十二支のお話しと通ずるものがありますね。
そしてここでアクシデントが発生します。
ねずみの後を追って最後に乗り込もうとしていた猫が、
尻尾を船の扉に挟まれて失ってしまったのです。
何とか船には乗り込めた猫ですが、
大事な尻尾はちぎれ、洪水に飲まれてしまいました。
ノアの箱舟に乗り込んだ猫の片割れは、
前述のように尻尾がなかったとされます。
![ヤコポ・バッサーノ作『洪水後のノアの生贄(いけにえ)』](https://i2.wp.com/mainichihime.com/wp-content/uploads/2021/11/eb22bf7a906b7f73af3d68cd620dade7-4.jpg?resize=500%2C355&ssl=1)
ヤコポ・バッサーノ作『洪水後のノアの生贄(いけにえ)』
しっぽのない猫・マン島のマンクスキャット
そして現実に、私たちの身の回りには、尻尾のない個体が暮らしています。
これについても面白い話が残っています。
イギリス領海に浮かぶマン島発祥の猫として、
マンクスと呼ばれる品種が存在するのですが
この猫は尻尾が短かったり、そもそも尻尾がない個体ばかりという珍しい品種です。
![マンクスキャット しっぽのない伝説](https://i2.wp.com/mainichihime.com/wp-content/uploads/2021/11/44d29d2792be3bad9a9ed98c7bbb20d6.png?resize=500%2C339&ssl=1)
マンクスキャット 猫図鑑より
この特徴的なスタイルが、いつからか
「大昔に、ノアの箱舟に乗り込んだ猫の子孫」とささやかれるようになっているのです。
もちろん、実際には孤島特有の固有種として誕生していますし、
けがで尻尾を失ったこの子孫も尻尾がない、という事はないのですが、
マンクスは泳ぎが上手いこともあってか、
これが洪水のイメージともダブり、余計にこの伝承を引き立てているようです。
マンクスには様々な迷信や伝説があります。
・ネズミを追いかけていた猫が、
ノアの箱舟に最後に飛び乗ろうとして尻尾が扉に挟まれてしまった。
・マン島を根城にしていた海賊が帽子の飾りとして
長いネコの尻尾をみんな切り取ってしまった。
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・マンクスは断尾を繰り返していたら
尻尾が無い猫が産まれるようになった。など、
どれも根拠としては薄いものです。
イギリスのマン島で突然変異によって生まれた尻尾のない猫。
孤立した島の中で他の特徴を持つ猫との交配はされないまま、
定着して、マンクスとなりました。
見かけはジャパニーズボブテイルに似ていますが、
ジャパニーズボブテイルの尻尾は劣性遺伝。
遺伝子はまったく別のものです。
![ジャパニーズボブテイル](https://i0.wp.com/mainichihime.com/wp-content/uploads/2021/11/66c19942ab4ba346fdb64ccc04cde373-2.png?resize=500%2C343&ssl=1)
ジャパニーズボブテイル 猫図鑑より
ジャパニーズボブテイルにも、
尻尾の長い猫が好まれず、断尾を繰り返したために生まれた、という説がありますが、
後天的に失ったしっぽは遺伝子には影響しません。
イギリスと日本。遠く離れた国ではありますが、同じ島国という特徴から、
他の特徴を持った猫との交配が行われず、
固有の進化を遂げた、という点でとてもよく似ていますね。
また、マンクスは尻尾がないだけでなく、
前足よりも後ろ足のほうが長く、歩くときに
ぴょんぴょんと飛び跳ねるようなマンクスホップと呼ばれる独特の歩き方をします。
これも、実はノアの方舟の扉に、後ろ足も挟まれてしまったからである、
という言い方もするそうです。
マンクスの失われたしっぽ、いろいろな伝説がありますが、
真実はマンクスのみぞ知る、という事でしょうか。
今日のヒメちー
ヒメちーってば、
そう言う風にしっぽたれ下げておくと、
海賊に狙われちゃうわよ。
それは困りますねえ…。
でも今日はこのスタイルがいいのです。
ヒメちーにしっぽがなかったら…。
まあ、それはそれで可愛いけれど。
ノアの方舟に乗り遅れた猫の子孫って、自慢しちゃうかも。
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